古事記 青空文庫で読む 上の巻vol.1 イザナギ・イザナミ(頭の整理用)
以下参考
https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html
●●●一、イザナギの命とイザナミの命
この世界の一番始めの時に、天で御出現になつた神樣は、お名をアメノミナカヌシの神といいました。
次の神樣はタカミムスビの神、
次の神樣はカムムスビの神、
この御お三方かたは皆お獨で御出現になつて、やがて形をお隱しなさいました
國ができたてで水に浮いた脂のようであり、
水母くらげのようにふわふわ漂つている時に、
泥の中から葦あしが芽めを出して來るような勢いの物によつて御出現になつた神樣は、
ウマシアシカビヒコヂの神といい、
次にアメノトコタチの神
この方々かたがたも皆お獨で御出現になつて形をお隱しになりました。
以上の五神は、特別の天の神樣です。
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それから次々に現われ出た神樣は、
クニノトコタチの神、
トヨクモノの神、
ウヒヂニの神、
スヒヂニの女神、
ツノグヒの神、
イクグヒの女神、
オホトノヂの神、
オホトノベの女神、
オモダルの神、
アヤカシコネの女神、
それからイザナギの神とイザナミの女神とでした。
このクニノトコタチの神からイザナミの神までを神代七代と申します。
そのうち始めの御二方おふたかたはお獨立ひとりだちであり、
ウヒヂニの神から以下は御二方で一代でありました。
–以上は、理由とかは書いてないので、そういうものです。
●島々の生成
イザナギの命みこと・イザナミの命みこと御二方おふたかた
オノゴロ島
御子みこ水蛭子ひるこをお生うみになりました。
この子はアシの船に乘せて流してしまいました。
次に淡島あわしま
①淡路あわじのホノサワケの島
②伊豫いよの二名ふたなの島(四國)
伊豫いよの國をエ姫ひめといい、
讚岐さぬきの國をイヒヨリ彦ひこといい、
阿波あわの國をオホケツ姫といい、
土佐とさの國をタケヨリワケ
③次に隱岐おきの三子みつごの島をお生みなさいました。この島はまたの名をアメノオシコロワケといいます
④次に筑紫つくしの島(九州)をお生うみになりました。やはり身み一つに顏が四つあります
筑紫つくしの國をシラヒワケといい、
豐とよの國をトヨヒワケといい、
肥ひの國をタケヒムカヒトヨクジヒネワケといい、
熊曾くまその國をタケヒワケといいます
⑤次に壹岐いきの島をお生みになりました。またの名を天一あめひとつ柱はしらといいます
⑥次に對馬つしまをお生みになりました。またの名をアメノサデヨリ姫といいます。
⑦次に佐渡さどの島をお生みになりました。
⑧次に大倭豐秋津島おおやまととよあきつしま(本州)をお生みになりました。またの名をアマツミソラトヨアキツネワケといいます。
この八つの島がまず生まれたので大八島國おおやしまぐにというのです。
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1それからお還かえりになつた時に吉備きびの兒島こじまをお生みになりました。またの名なをタケヒガタワケといいます。
2次に小豆島あずきじまをお生みになりました。またの名をオホノデ姫ひめといいます。
3次に大島をお生うみになりました。またの名をオホタマルワケといいます。
4次に女島ひめじまをお生みになりました。またの名を天あめ一つ根といいます。
5次にチカの島をお生みになりました。またの名をアメノオシヲといいます。
6次に兩兒ふたごの島をお生みになりました。またの名をアメフタヤといいます。
吉備の兒島からフタヤの島まで合わせて六島です。
●神々の生成 國々を生み終つて、更さらに神々をお生みになりました
1オホコトオシヲの神、
2次にイハツチ彦の神、
3次にイハス姫の神、
4次にオホトヒワケの神、
5次にアメノフキヲの神、
6次にオホヤ彦の神、
7次にカザモツワケノオシヲの神をお生みになりました。
8次に海の神のオホワタツミの神をお生みになり、
9次に水戸の神のハヤアキツ彦の神と
10ハヤアキツ姫の神とをお生みになりました。
オホコトオシヲの神からアキツ姫の神まで合わせて十神です。
このハヤアキツ彦とハヤアキツ姫の御二方が
河と海とでそれぞれに分けてお生みになつた神の名は、
アワナギの神
・アワナミの神
・ツラナギの神
・ツラナミの神
・アメノミクマリの神
・クニノミクマリの神
・アメノクヒザモチの神
・クニノクヒザモチの神であります。
アワナギの神からクニノクヒザモチの神まで合わせて八神です。
次に風の神のシナツ彦の神、
木の神のククノチの神、
山の神のオホヤマツミの神、
野の神のカヤノ姫の神、またの名をノヅチの神という神をお生みになりました。
シナツ彦の神からノヅチまで合わせて四神です。
このオホヤマツミの神とノヅチの神とが山と野とに分けてお生みになつた神の名は、
アメノサヅチの神
・クニノサヅチの神
・アメノサギリの神
・クニノサギリの神
・アメノクラドの神
・クニノクラドの神
・オホトマドヒコの神
・オホトマドヒメの神であります。
アメノサヅチの神からオホトマドヒメの神まで合わせて八神です。
次にお生みになつた神の名はトリノイハクスブネの神、この神はまたの名を天あめの鳥船とりふねといいます。
次にオホゲツ姫の神をお生みになり、
次にホノヤギハヤヲの神、またの名をホノカガ彦の神、またの名をホノカグツチの神といいます。
この子こをお生みになつたためにイザナミの命は御陰みほとが燒かれて御病氣になりました。
その嘔吐へどでできた神の名はカナヤマ彦の神
とカナヤマ姫の神、
屎くそでできた神の名はハニヤス彦の神
とハニヤス姫の神、
小便でできた神の名はミツハノメの神
とワクムスビの神です。
この神の子はトヨウケ姫の神といいます。
かような次第でイザナミの命は火の神をお生みになつたために遂ついにお隱かくれになりました。
天の鳥船からトヨウケ姫の神まで合わせて八神です。
すべてイザナギ・イザナミのお二方の神が、共にお生みになつた
島の數は十四
神は三十五神であります。
これはイザナミの神がまだお隱れになりませんでした前にお生みになりました。
ただオノゴロ島はお生みになつたのではありません。
また水蛭子ひること淡島とは子の中に入れません。
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●黄泉よみの國
イザナミの命の枕の方や足の方に這はい臥ふしてお泣なきになつた時に、
涙で出現した神は香具山の麓の小高い處の木の下においでになる泣澤女なきさわめの神です
ここにイザナギの命は、お佩はきになつていた長い劒を拔いて御子みこのカグツチの神の頸くびをお斬りになりました。
その劒の先についた血が清らかな巖いわおに走りついて出現した神の名は、
イハサクの神、
次にネサクの神、
次にイハヅツノヲの神であります。
次にその劒のもとの方についた血も、巖に走りついて出現した神の名は、ミカハヤビの神、
次にヒハヤビの神、
次にタケミカヅチノヲの神、またの名をタケフツの神、またの名をトヨフツの神という神です。
次に劒の柄に集まる血が手のまたからこぼれ出して出現した神の名はクラオカミの神、
次にクラミツハの神であります。
以上イハサクの神からクラミツハの神まで合わせて八神は、御劒によつて出現した神です。
殺されなさいましたカグツチの神の、頭に出現した神の名はマサカヤマツミの神、
胸に出現した神の名はオトヤマツミの神、
腹に出現した神の名はオクヤマツミの神、
御陰みほとに出現した神の名はクラヤマツミの神、
左の手に出現した神の名はシギヤマツミの神、
右の手に出現した神の名はハヤマツミの神、
左の足に出現した神の名はハラヤマツミの神、
右の足に出現した神の名はトヤマツミの神であります。
マサカヤマツミの神からトヤマツミの神まで合わせて八神です。
そこでお斬りになつた劒の名はアメノヲハバリといい、またの名はイツノヲハバリともいいます。
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●身禊
筑紫つくしの日向ひむかの橘たちばなの小門おどのアハギ原はらにおいでになつて禊みそぎをなさいました。
その投げ棄てる杖によつてあらわれた神は衝つき立たつフナドの神、
投げ棄てる帶であらわれた神は道のナガチハの神、
投げ棄てる袋であらわれた神はトキハカシの神、
投げ棄てる衣ころもであらわれた神は煩累わずらいの大人うしの神、
投げ棄てる褌はかまであらわれた神はチマタの神、
投げ棄てる冠であらわれた神はアキグヒの大人の神、
投げ棄てる左の手につけた腕卷であらわれた神はオキザカルの神
とオキツナギサビコの神
とオキツカヒベラの神、
投げ棄てる右の手につけた腕卷であらわれた神はヘザカルの神
とヘツナギサビコの神
とヘツカヒベラの神とであります。
以上フナドの神からヘツカヒベラの神まで十二神は、
おからだにつけてあつた物を投げ棄てられたのであらわれた神です。
そこで、「上流の方は瀬が速い、下流かりゆうの方は瀬が弱い」と仰せられて、
眞中の瀬に下りて水中に身をお洗いになつた時にあらわれた神は、
ヤソマガツヒの神
とオホマガツヒの神とでした。
この二神は、あの穢い國においでになつた時の汚垢けがれによつてあらわれた神です。
次にその禍わざわいを直なおそうとしてあらわれた神は、
カムナホビの神
とオホナホビの神
とイヅノメです。
次に水底でお洗いになつた時にあらわれた神は
ソコツワタツミの神
とソコヅツノヲの命、
海中でお洗いになつた時にあらわれた神は
ナカツワタツミの神
とナカヅツノヲの命、
水面でお洗いになつた時にあらわれた神は
ウハツワタツミの神
とウハヅツノヲの命です。
このうち御三方おさんかたのワタツミの神は安曇氏あずみうじの祖先神そせんじんです。
また、ソコヅツノヲの命・ナカヅツノヲの命・ウハヅツノヲの命御三方おさんかたは住吉神社すみよしじんじやの三座の神樣であります。
かくてイザナギの命が左の目をお洗いになつた時に御出現ごしゆつげんになつた神は
天照あまてらす大神おおみかみ、
右の目をお洗いになつた時に御出現になつた神は月讀つくよみの命、
鼻をお洗いになつた時に御出現になつた神はタケハヤスサノヲの命でありました。
以上ヤソマガツヒの神からハヤスサノヲの命まで十神は、おからだをお洗いになつたのであらわれた神樣です。
イザナギの命はたいへんにお喜びになつて、「わたしは隨分ずいぶん澤山たくさんの子こを生うんだが、
一番ばんしまいに三人の貴い御子みこを得た」と仰せられて、
頸くびに掛けておいでになつた玉の緒おをゆらゆらと搖ゆらがして天照あまてらす大神にお授けになつて、
「あなたは天をお治めなさい」と仰せられました。
この御頸おくびに掛かけた珠たまの名をミクラタナの神と申します。
次に月讀つくよみの命に、「あなたは夜の世界をお治めなさい」と仰せになり、
スサノヲの命には、「海上をお治めなさい」と仰せになりました。
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それでそれぞれ命ぜられたままに治められる中に、スサノヲの命だけは命ぜられた國をお治めなさらないで、
長い鬚ひげが胸に垂れさがる年頃になつてもただ泣きわめいておりました。
その泣く有樣は青山が枯山になるまで泣き枯らし、海や河は泣く勢いで泣きほしてしまいました。
そういう次第ですから亂暴な神の物音は夏の蠅が騷ぐようにいつぱいになり、
あらゆる物の妖わざわいが悉く起りました。
そこでイザナギの命がスサノヲの命に仰せられるには、
「どういうわけであなたは命ぜられた國を治めないで泣きわめいているのか」といわれたので、
スサノヲの命は、「わたくしは母上のおいでになる黄泉よみの國に行きたいと思うので泣いております」と申されました。
そこでイザナギの命が大變お怒りになつて、「それならあなたはこの國には住んではならない」と仰せられて追いはらつてしまいました。
このイザナギの命は、淡路の多賀たがの社やしろにお鎭しずまりになつておいでになります。
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