古事記 青空文庫で読む 上の巻vol.2 天照らす大神とスサノヲの命(頭の整理用)
以下参考
https://www.aozora.gr.jp/cards/001518/card51732.html
●誓約うけい
天照らす大神はまずスサノヲの命の佩はいている長い劒をお取りになつて三段に打うち折つて、
音もさらさらと天の眞名井まないの水で滌そそいで囓かみに囓かんで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神の名は
①タギリヒメの命またの名はオキツシマ姫の命でした。
②次にイチキシマヒメの命またの名はサヨリビメの命、
③次にタギツヒメの命のお三方でした
次にスサノヲの命が天照らす大神の左の御髮に纏まいておいでになつた大きな勾玉まがたまの澤山ついている玉の緒おを
お請うけになつて、音もさらさらと天の眞名井の水に滌そそいで囓かみに囓かんで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神は
①マサカアカツカチハヤビアメノオシホミミの命、
②次に右の御髮の輪に纏まかれていた珠をお請けになつて囓みに囓んで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神はアメノホヒの命、
③次に鬘かずらに纏いておいでになつていた珠をお請けになつて囓みに囓んで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神はアマツヒコネの命、
④次に左の御手にお纏きになつていた珠をお請けになつて囓みに囓んで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神はイクツヒコネの命、
⑤次に右の御手に纏いておいでになつていた珠をお請けになつて囓みに囓んで吹き棄てる息の霧の中からあらわれた神はクマノクスビの命、
合わせて五方いつかたの男神が御出現になりました。
あとから生まれた五人の男神はわたしの身につけた珠によつてあらわれた神ですから自然わたしの子です。
先に生まれた三人の姫御子ひめみこはあなたの身につけたものによつてあらわれたのですから、やはりあなたの子です」
と仰せられました。
その先にお生まれになつた神のうちタギリヒメの命は、九州のむなかたの沖つ宮においでになります。
次にイチキシマヒメの命は形の中つ宮においでになります。
次にタギツヒメの命は形の邊へつ宮においでになります。
この三人の神は、形の君たちが大切にお祭りする神樣であります。
この後でお生まれになつた五人の子の中に、
アメノホヒの命の子のタケヒラドリの命、
これは出雲の國の造みやつこ・
ムザシの國の造・
カミツウナカミの國の造・
シモツウナカミの國の造・
イジムの國の造・
津島の縣あがたの直あたえ・
遠江とおとおみの國の造たちの祖先です。
次にアマツヒコネの命は、凡川内おおしこうちの國の造・
額田ぬかた部の湯坐ゆえの連・
木の國の造・
倭やまとの田中の直あたえ・
山代やましろの國の造・
ウマクタの國の造・
道ノシリキベの國の造・
スハの國の造・
倭のアムチの造・
高市たけちの縣主・
蒲生かもうの稻寸いなき・
三枝部さきくさべの造たちの祖先です
●天の岩戸
多くの神樣たちが天の世界の天あめのヤスの河の河原にお集まりになつて
タカミムスビの神の子のオモヒガネの神
という神に考えさせてまず海外の國から渡つて來た長鳴鳥ながなきどりを集めて鳴かせました。
次に天のヤスの河の河上にある堅い巖いわおを取つて來、また天の金山かなやまの鐵を取つて
鍛冶屋かじやのアマツマラという人を尋ね求め、
イシコリドメの命に命じて鏡を作らしめ、
タマノオヤの命に命じて大きな勾玉まがたまが澤山ついている玉の緒の珠を作らしめ、
アメノコヤネの命と
フトダマの命と
を呼んで天のカグ山の男鹿おじかの肩骨をそつくり拔いて來て、
天のカグ山のハハカの木を取つてその鹿しかの肩骨を燒やいて占うらなわしめました。
次に天のカグ山の茂しげつた賢木さかきを根掘ねこぎにこいで、
上うえの枝に大きな勾玉まがたまの澤山の玉の緒を懸け、
中の枝には大きな鏡を懸け、
下の枝には麻だの楮こうぞの皮の晒さらしたのなどをさげて、
フトダマの命がこれをささげ持ち、
アメノコヤネの命が莊重そうちような祝詞のりとを唱となえ、
アメノタヂカラヲの神が岩戸いわとの陰かげに隱れて立つており、
アメノウズメの命が天のカグ山の日影蔓ひかげかずらを手襁たすきに懸かけ、
眞拆まさきの蔓かずらを鬘かずらとして、
天のカグ山の小竹ささの葉を束たばねて手に持ち、
天照らす大神のお隱れになつた岩戸の前に桶おけを覆ふせて踏み鳴らし
神懸かみがかりして裳の紐を陰ほとに垂らしましたので、
天の世界が鳴りひびいて、たくさんの神が、いつしよに笑いました。
そこで天照らす大神は怪しいとお思いになつて、
天の岩戸を細目にあけて内から仰せになるには、
「わたしが隱れているので天の世界は自然に闇く、下の世界も皆みな闇くらいでしようと思うのに、
どうしてアメノウズメは舞い遊び、また多くの神は笑つているのですか」と仰せられました。
そこでアメノウズメの命が、「あなた樣に勝まさつて尊い神樣がおいでになりますので樂しく遊んでおります」と申しました。
かように申す間に
アメノコヤネの命と
フトダマの命とが、
かの鏡をさし出して天照らす大神にお見せ申し上げる時に
天照らす大神はいよいよ不思議にお思いになつて、
少し戸からお出かけになる所を、
隱れて立つておられたタヂカラヲの神が
その御手を取つて引き出し申し上げました。
そこでフトダマの命がそのうしろに標繩しめなわを引き渡して、
「これから内にはお還り入り遊ばしますな」と申しました。
かくて天照らす大神がお出ましになつた時に、天も下の世界も自然と照り明るくなりました。
ここで神樣たちが相談をしてスサノヲの命に澤山の品物を出して罪を償つぐなわしめ、
また鬚ひげと手足てあしの爪とを切つて逐いはらいました。